コラム

m-flo「come again」から20年。日本の2ステップはどんな歴史を辿ったか

m-floの大ヒット曲「come again」のリリースから丸20年が経過。日本に2ステップの衝撃を巻き起こした本作は、今日までアーティストを含め多くの人々に影響を与えてきました。そこで今回は、この「come again」を軸にJ-POPの2ステップを探究。歴史とともに、楽曲を紹介していきます。





日本で2ステップが流行するまで

2ステップとは、1990年代後半にイギリスで発祥した音楽で、シンコペーションを用いた独特の跳ねたリズムが最大の特徴。もともとはR&Bやハウスなどの要素を汲んだUKガラージから派生したジャンルでしたが、UKガラージ=2ステップとも認識されるほど、ジャンル内で特に大きな市民権を得た音楽でもあります。





日本では、m-floの「come again」が発表されるより前の2000年6月、テイ・トウワがリリースした「火星(Mars)」がスマッシュヒット。クラムボンの原田郁子によるボーカルのパワーも相まって、個人的にはこの曲が、J-POPにおける2ステップの確固たる草分けであるように感じています。もっとも、同曲のクラブミュージック特化型の革新性が広く受け入れられるにはまだ少し機が熟していなかったようで、2ステップとJ-POPとの本格的な親和は、やはり「come again」まで待つことになります。

「come again」が大ヒットした理由

当時のm-floはシンガーのLISA、ラッパーのVERBAL、DJの☆Takuの三人体制で、1999年にシングル「been so long」でメジャーデビュー。ブラックミュージックブームと共鳴したスタイリッシュな音楽性であったと同時に、構成のメリハリや大衆性の投入など、J-POPならではの分かりやすさも提示している点が、今に続くm-floのトレードマークとなっています。

「come again」は21世紀に突入して間もない2001年1月17日にリリース。☆Takuいわく「日本の歌謡曲の方程式を無視して作った曲」とのことですが、どれだけビートが耳新しくても、温かみのあるストリングスや美しいメロディライン、さらには”傷心をクラブで癒す女性”が登場するストーリー性ある歌詞など、日本人が反射的にのめり込んでしまうだけのドラマティック要素は存分に振るわれているように感じるし、言ってみればその自然な塩梅こそが、ジャンルレスを誇るm-flo最大の強みだったように思います。

もちろん、カネボウ化粧品「テスティモ」のタイアップソングとして、テレビで頻繁にオンエアされた効果も大きかったはず。有名女優が出演し、「come again」の曲調にもマッチしたお洒落なCMでしたから、曲の方に憧れが向くのもある種の必然でしょう。また音楽面では、米プロデューサーTimbalandが生みの親となり世界中で流行していた変則的なビート(通称チキチキ)が当時のJ-POPでもちょっとしたブームになっており、複雑なリズム構成の「come again」に対する抵抗心を和らげた、という見方も少なからず出来ると思います。チキチキに関してはUKガラージそのものへの影響もあったと言われており、日本でもm-floによって最大限に相互作用した格好です。

「come again」後の2ステップ

結果的に「come again」はオリコン週間チャート最高4位、約40万枚のCDセールスを記録する大ヒットに。あくまでもクラブミュージックの体裁でJ-POPを席巻した功績と影響力は凄まじく、後輩アーティストが「come again」のカバーに挑んだほか、ajapaiや大沢伸一ら2ステップを操るDJに対する世間的注目の強まり、そして2ステップの方式に則った曲が各方面から積極的にリリースされるなど、数々の現象を生みました。

代表的なところでは、月9主題歌に起用され、「come again」を凌ぐ売上を記録した平井堅の「KISS OF LIFE」(2001年5月発売)、SMAPのデビュー10周年記念シングル「Smac」(2001年7月発売)、CHEMISTRYの「FLOATIN’」(2002年7月発売)など。平井堅とCHEMISTRYは松尾潔がプロデュースを手掛けるアーティストという点で共通しており、ボーカルとの相性が良好だったからか、先述した曲以降でもたびたび2ステップを取り入れるに至っています。

また、立役者である☆Takuの2ステップなアプローチもとどまることを知らず、「come again」の次作「prism」でも紛うことなき”ハネ”を披露。2003年にはCrystal Kayの「Boyfriend -part II-」をプロデュースし、彼女の代表曲となりました。





その他、☆Takuのリミックスやプロデュース業での2ステップワークは挙げ出せばきりがありませんが、中でも「come again」と同年に発表された宇多田ヒカルの「DISTANCE – m-flo remix -」は、「come again」マナーが爽やかに生かされた珠玉の仕上がりなので、是が非でも押さえておきたいところ。

最近の邦楽2ステップは?

2000年代後期にはすっかり落ち着きを見せていた2ステップですが、ここ数年は「come again」を聴いて育ったニュージェネレーションのアーティストが2ステップに興じるケースが増えつつあり、時代が巡らんとばかりに再び熱いムーブメントを見せています。とりわけtofubeatsや向井太一に関してはm-floからの影響を公言しているので、リスナーにとっても感慨にふけられるのでは。

<近年の主な2ステップ曲>

・HyperJuice「City Lights feat. EVO+, Jinmenusagi」

・tofubeats「NEW TOWN」

・向井太一「Break Up」※☆Taku Takahashiプロデュース曲

・THREE1989「Planet Floor」

・Lucky Kilimanjaro「初恋」

・YOSA & TAAR「Fever (feat. SIRUP)」

・JUBEE「Joyride (feat. SARA-J)」

また、三浦大知が2016年に発表した「Yes & No」は、2ステップの進化を見せつけられるトリッキーな作品。若手の奮闘と並行して、今後は三浦大知のように中堅やベテランが2ステップへと目を向けていく可能性、あるいは2ステップを今様の形に進化させた作品の台頭も十分に考えられるでしょう。そもそも、本家的存在であるm-floが「come again」から時を経てもなお現役のトレンドセッターぶり。全方位を刺激するヒロイックな活動からはまだまだ目が離せそうにありません。


<2021年2月17日 追記>
ジャニーズグループのSexy Zoneが、最新曲「RIGHT NEXT TO YOU」で2ステップのリズムを採用。彼らを皮切りに、2021年は日本でも2ステップブームが本格的に加速する、かも。





なおJBSGROOVEでは、邦楽の2ステップ曲を集めたプレイリストを作成。
「come again」以降、人々に愛され続ける2ステップ。そのとびきりロマンティックで心酔的な躍動を、ぜひ堪能してみてください。

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