様々なタイプのプロデューサーと制作を交わしてきた向井太一。この最新作では、日本語R&Bシーンの御大であるT.Kuraをついに迎え、彼ならではのタイトでトリッキーなサウンドを軽快に乗りこなす。その晴れやかなボーカルワークたるや、リスペクトを寄せ続けた相手とのすこぶる充実したコラボレーションを雄弁に物語っている。
90年代から00年代にかけてのR&Bを意識したという本作だが、具体的には2005年ごろのT.Kuraの作風に近く、安室奈美恵の「GIRL TALK」をはじめCOLORやSoweluなど、彼が特に猛威をふるっていた時代の作品がスムーズに想起できる。加えて、歌詞のライティングにはT.Kuraの良きパートナーであるmichicoも参加。1ワードの強烈なリフレインや、恋の駆け引きをポップに盛り立てる描写の数々は彼女の真骨頂であり、若手最右翼である向井の表現力も相まって目を細めずにはいられない。この溢れんばかりのときめきと煌めき、長らくR&Bから離れている人にほどぜひ体感してほしい。
向井太一「BABY CAKES」
2021年2月24日配信開始