日本語R&Bの新たな指標を見出さずにはいられない2011年リリースの名盤。万人が心奪われたフル作『RAINBOW』を上回る多様なサウンド、オトメに生真面目にと軽快に表情を変えていくリリック、そして”七色の声”と謳われた美麗なボーカルと、宏実を取り巻く各要素がオリジナリティの創出に向け効果的に発動。結果、享楽性にもボリュームにも申し分のないR&B作品に仕上がった。
豪華プロデューサーが参加
プロデューサーには、U-Key zone、UTA、村山晋一郎、T-SKら国産R&Bシーンお馴染みの面々のほか、Brandyらを手がける海外のチーム、Check Mateも参加。本作の宏実が自由奔放な姿勢を取ることが出来たのは、他ならぬ彼らの辣腕が発揮されたからこそだろう。また「Fallin’ in Love Again」をはじめ、自作曲に独特の素朴さが現れ始めたのも本作の特筆すべき特徴。のちにリリースされる作品ではJ-POP然とした温もりある作風を深めていく宏実なだけに、本作におけるシンガーソングライターとしての自我は聴き逃せない。
<全曲レビュー>
1. Intro ~Magic~
メルヘンチックなアレンジが序章を告げるT-SKプロデュースのイントロ。「This is like a Magic・・・」と聴き手を優しく包む込むコーラス・ワークで、冒頭から気分はすっかり夢心地。
2. Magic feat.SWAY
アメリカのプロデュース・チームCheck Mateが登板したタイトル・トラック。浮遊感を漂わせるサウンドプロダクションと並行して、自らのカラフルな歌声を惜しげもなく炸裂させる宏実の才腕たるや、もはやベテランの域。
3. More & More feat.日之内エミ
親しい間柄にある日之内エミを客演に迎えたキャッチーな乙女ポップ。日之内との日常的な会話がベースとなっているという恋愛詞はなかなかの明け透け具合だが、ソーダ水のように淡いUTA製トラックによって、小さっぱりとした雰囲気に仕上がっているのが特徴。
4. Addicted
2009年9月リリースのシングル「愛されたい」のカップリングとして収録されていた楽曲。意中の彼に明け暮れる「依存中な女性」を主人公に据えた、当時のライブでも定番だったミドル・チューン。
5. Fallin’ In Love Again
その名の通り、同じ人をもう一度好きになってしまった女性の心情が綴られたバラード・ナンバー。BU-NIとの即興セッションの中、宏実の繊細な節回しがまるで意志を持つかのように行き交う様はまさに圧巻。
6. My Way
UTAが得意とするロックがモチーフのアップ。彼女なりの上昇志向を押し出している反面、サビでは<歩いてくんだ 孤独と一緒に>と歌うなど、シリアスなメッセージも精妙に同居させている。
7. Superwoman feat.SWAY
U-Key zoneが指揮を執ったオムニバス盤『Advent of UKZ』にも収められているサイバー指向のアップ。タフネス滾る頼もしいリリックと、極めてフューチャリスティックなU-Key zoneによるサウンドとの融合は、何度聴いても斬新で本当に魅力的。