MOMO “mocha” N.としてこれまで黒木メイサ、三浦大知、安室奈美恵らの作品を手がけてきたシンガー兼クリエイター:mochAの今年二作目となる配信シングル。2009年末の歌手デビュー以来長らくヴェールに包まれ、謎が謎を呼んでいた彼女のビジュアルが、ここへ来て遂に解禁。さらに今回の楽曲「ジルコニア」は、毎度のごとく話題に挙がるリリック・コンセプトもさることながら、未だかつてないほどのポップ・サウンドへと切り込んだことで、mochAのオーバーグラウンドでの活動を溌剌と予感させる、スタンダードながら新感覚のアップ・ナンバーに仕上がりました。
前作「TAG」では、意中の相手を性懲りもなくつけ回すドSでドMな恋愛中毒少女の奮闘を鬼ごっこに見立ててコミカルに描いたmochAですが、対する本作「ジルコニア」では対象の価値を宝石に喩え、女子の最優先本能である物欲が清々しくヒートアップ。本物のダイヤに狙いをつけるも、運悪く代用石であるジルコニアの方を入手してしまい、一時は落ち込む主人公。しかし中盤以降、ジルコニアの良さを見出し始め、最終的には訝しく感じながらも、自らが選んだジルコニアに翻弄されていく・・・という、怪我の功名を題材とした映画顔負けのドラマティック・ストーリー(?)が主体。したたかでいて何とも愛らしい、天下無敵ともいえるmochAのぶっ飛んだセンスが著しく投影されています。「対象を追い求める」という根本のテーマ、そして失敗にも屈さず、まるで開き直るかのようにプラス思考なプロットも「TAG」と共通しており、同作のファンならとりわけのめり込むこと請合いです。
そんなユニークなリリックを盛り立てるのが、お馴染みU-Key zoneの手による軽妙なダンス・トラック。これまで以上に直感的なポップさで彩られており、聴く者を新鮮味溢れる中毒の渦へと誘い込みます。とは言え、無機質に鼓動するビートやオリジナルな感性が息づく構成など、元来より彼<U-key zone>が持ち味としてきた奥行きのある世界観も依然健在で、まさにジルコニア(或いはダイヤモンド)のようにいくつもの側面から成り立っている楽曲と言えるでしょう。
こうして素顔も公開されたタイミングだからこそ、この楽曲の持つ奇天烈で愉快なコンセプトの迫力も一入。
ぜひマニアックなリスナーには「色んな角度から味わい尽くしてほしい」と、私自身”もっぱらそんな気分”でおります。
なお当サイトでは、このたびmochAへのインタビューも実施。コケティッシュな魅力を裏付ける彼女ならではの感性に迫りました。
mochA「ジルコニア」
2011年10月19日配信開始
1. ジルコニア
2. ジルコニア Instrumental