「上手いとは言い難いけど、決して無視出来ないピュアな魅力がある」
唐沢美帆の歌声を聴いた第一印象は、確かそんな感じだった。
J-R&Bの第一次最盛期とも言える2000年の真っ只中にデビューした唐沢は、MISIAやMINAMIなどのプロデュースを請け負っていた島野聡によるデビュー曲「anytime, anyplace」でデビュー。以来、当時のクラブシーンを象徴するスムースなトラックと透明感ある歌声を武器に数多の名曲を生み出した。
代表曲として数えられるのが、オリコン最高10位のヒットを叩き出した3rdシングル「Way to Love」。月9ドラマ『ラブ・レボリューション』挿入歌に起用されたこの楽曲は、宇多田ヒカルの「First Love」を思わせる柔和なメロディと、キュンと心を突くハートウォーミングな歌詞で勝負に出た渾身のラブバラードナンバー。相手を思うひたむきな気持ちをそよ風のごとく爽やかに歌い上げていく様子に、唐沢のナチュラルな魅力が凝縮されている。
自身初となったアルバム『sparkle』にはほかにも、90’sテイストの冷ややかなR&Bビートを据えた2ndシングル「anytime anywhere」での物憂げな歌いっぷりや、愉しさと切なさの両面を一本の歌声で繊細に紡いでいく「TREASURE BOX」、<みんな自分の片割れずっと探して 彷徨い続けるって本当かな>と無常感を込めて歌い上げるスロー⑫『無人の島』など、持ち前のシルキーボイスをポップスとR&Bの両面で発揮しており、唐沢の歌に込めたスタンスが力強く響いてくる。
当時、日本のR&B界隈は溢れんばかりの女性シンガーで埋め尽くされており、唐沢ほどの凛とした個性でさえなかなか先端へは出づらい状況だったと思う。しかし、そんな荒波の中でも彼女がみずみずしく活動したという事実は確かに存在し、何より本作がその功績を裏付ける強力なエビデンスとなっているのだ。
唐沢美帆『sparkle』
2002年3月6日発売
ポニーキャニオン
<収録曲>
1. ライヴ
2. Endless Harmony
3. Way to Love
4. TREASURE BOX
5. anytime,anywhere
6. two of us
7. 卒業写真
8. ラクエン
9. 0℃ ~stay with me~
10. to be
11. Get Out From This Place
12. 無人の島 ~Album Version~
13. Endless Harmony (Jazztronik Remix)