JAPANESE R&B

安室奈美恵 『BEST FICTION』 新たな進化を引っさげた第二黄金期の集大成

J-POPシーンを牽引するトップスター・安室奈美恵のベストアルバム『BEST FICTION』(2008/07/30)。前作『LOVE ENHANCED♥single collection』以来約6年4ヶ月ぶりとなる通算3枚目となるベスト盤で、「Wishing On The Same Star」から、「60s 70s 80s」収録の3曲までのシングルA面曲(両A面の場合1曲目のみ)を網羅しているほか、新曲も2曲収録された全17曲収録です。




BEST FICTION01. Do Me More
このアルバムに初収録となる新曲。現在『プレミアム ヴィダルサスーンFashion×Music×VS』キャンペーンソングとしてオンエアされています。TimbalandやDenjaら海外のPro.らが得意とするR&B風味のエレクトロチューンで、Pro.は彼女との相性バツグンのNao’ymt。内容・PVともにおとぎ話を強く意識したものになっており、遊び心旺盛な作り手側の企みが全体に滲み出る、コアな味わいが憎い楽曲です。

Wishing On The Same Star(CCCD)02. Wishing On The Same Star
映画「命」主題歌。愛の深さを歌ったスケール感あるバラードナンバーです。この頃の彼女は、前シングルの「I WILL」の影響もあってか、まだ落ち着いたバラードイメージが定着していたように思います。ちなみにこの楽曲はUSのシンガーKeedyのカバー曲で、ソングライティングはCeline Dionらを手がけてきた大御所・Diane Warrenが手がけています。

shine more (CCCD)03. shine more
自身の出演したCM『ルシードL プリズムマジックヘアカラー』の初タイアップ曲。R&B/Hip-HopプロジェクトであるSUITE CHICでの活動を経て初となるシングルで、彼女の音楽への欲や本懐が楽曲に奔放に表れたR&Bチューンになっており、現在の安室奈美恵の根源・ルーツともいえる重要な1曲。




Put’Em Up (CCCD)04. Put’Em Up
米の大物プロデューサー・Dallas Austinとひさびさに組んだのが今作。
妖しいロートーンのメロディーラインが畳み掛けるように慌しく据えられた切迫系ダンサーで、一見地味めな楽曲ながら、その確かなクオリティと強烈な中毒性に一瞬にしてシビれてしまったマチガイナイ名曲です。

SO CRAZY / Come (CCCD)05. SO CRAZY
ブラック路線に転向後、コンスタントにリリースを重ねていた彼女の2003年3枚目のシングル。キャッチーなメロが特徴の正統派手法のR&Bナンバーで、日本語リリックは前作に引き続きmichicoが担当、中盤のクールなRapのリリックは、michico繋がりでシンガーのTIGERが手がけています。さりげなくRihannaや3LWを手がけるプロデュースチーム・Full Forceが関与しているのもポイント。

ALARM (CCCD)06. ALARM
長らく続いていたシングル連続TOP10入り記録が、このシングルで途絶えてしまったという曰く付きの前のめりダンスチューン。『ティッタレイディーティッタベイビー♪』というHookフレーズはもとい、そのキャッチーな振り付けにも病みつきになる事請負の1曲です。プロデューサーは、EXILEやSweetSらavexアーティストを数々手がけるMONK。

ALL FOR YOU(CCCD)07. ALL FOR YOU
約2年ぶりにバラードに回帰したのが今作。観月ありさ主演のドラマ『君が想い出になる前に』主題歌で、いわゆる事務所のバーターとしての起用だったわけですが、その効果もあり、最終的にひさびさの売り上げ10万枚オーバーを記録し、このあとの彼女の復活の吉兆を垣間見れた1曲になりました。内容は澄んだ空気に包まれたスローナンバーで、作詞に渡辺なつみ(BoA・倖田來未・ZONE)、作曲に松本良喜(RUI「月のしずく」、中島美嘉「雪の華」)という豪華タッグを迎えています。




GIRL TALK/the SPEED STAR08. GIRL TALK
初のmichico/T.Kura夫妻プロデュースとなったこの楽曲は、タイトルのとおりガールズトークに打ち込む女子達の絆を描写したポップなナンバー。ライト層を意識した全体に及ぶキャッチーな仕上がりや、CMタイアップなども功を奏し、チャートでは約2年ぶりにTOP3に返り咲き、売り上げも前作に続き10万越えを記録した、輝かしいヒットチューンです。この曲はとにかく夫妻のプロデュースぶりが神がかりすぎております。リアルを追求したリリックや、キュートなトラックも勿論そうですが、何よりも素晴らしいのが、michicoお手製のそのボーカル・プロダクション。安室ちゃんの個性を生かし尽くさせたら、右に出るものはいないでしょう!

WANT ME,WANT ME09.WANT ME,WANT ME
前作から半年のスパンを空けてのリリースとなった、バングラビートを敷いたダンスホール調アッパー。レゲエシーンからSUGI-Vをプロデューサーに抜擢し、彼女に眠っていた本能ともいえる側面を露呈、覚醒させる事に成功しています。リリシストにはもはやお馴染みとなったmichicoが登板し、コンドームの名前や「Up&down,in&out」などといったキワどいフレーズの数々を天下の安室奈美恵に歌わせております。でもそれがいやにシックリきちゃうから困ったものです。トラックも今にも汗が迸りそうなほど湿り気を帯びた妖しい作りなんですが、体裁は相変わらずMissy Elliottの某曲です(笑)。

White Light/Violet Sauce10. White Light
安室ちゃん初のクリスマスソング。このシングル前にリリースされたアルバム『Queen of Hip-Pop』内で多くの楽曲を手がけ注目されたNao’ymt氏が、初めてシングル曲のプロデュースを担っています。今でこそ好きな1曲になったんですが、正直当時はあんま好きじゃなかったんですよねぇ。展開がフラットすぎるというか、淡々としすぎてて。

CAN’T SLEEP,CAN’T EAT,I’M SICK/人魚11. CAN’T SLEEP, CAN’T EAT, I’M SICK
そんな前シングルによる釈然としない気持ちのまま迎えたのが今作。再び夫妻とタッグと組んだこの楽曲を一度聴いて歓喜したのを今でも憶えています。ファンキーなホーンをこれでもかと効果的に使用した夏にピッタリなアッパーチューンで、コーラスの重ね方が個人的にタマりません!




Baby Don't Cry12. Baby Don’t Cry
前作から7ヶ月ぶりのシングル。当時新作の到着を首を長~くして待ってました。Nao’ymt氏プロデュースによるハートウォーミングなポップナンバーで、応援歌的な要素も持ち合わせています。「Naoさんってこんなのも作れるのね~」とえらく感嘆しましたね。売り上げも15万枚近い数字を叩き出し、ひさびさの王道ヒットチューンになりました。ひたすら街中を歩くPVも話題になりました。

FUNKY TOWN(DVD付)13. FUNKY TOWN
自身出演の「新リプトン リモーネ」CMソングとして発売前からオンエアされていたこの楽曲は、約1年ぶりにPro.登板したmichico/T.Kura夫妻によるリズミックなダンス・アッパーで、R&Bとしてのツボを多々押さえたゴージャスな仕上がりが魅力の1曲です。この頃運転免許を取得するため合宿に臨んでた俺ですが、発売前のラジオ音源を合宿先に持って行って、ひっきりなしに聴いてましたw やっぱ夫妻作品は最高!

60s 70s 80s(DVD付)14. NEW LOOK
今年3月にリリースされた3曲A面シングル『60s 70s 80s』の1曲目。
現在①がCMソングとして起用されている『プレミアム ヴィダルサスーン』の初代CMソングとして大々的な宣伝がなされ、自身でおよそ9年ぶりとなる初登場1位を獲得、売り上げも30万枚に迫る大ヒットを記録しています。今作は「リメイク」をキーワードにしており、今楽曲では彼女自身大好きだというThe Supremesの代表曲「Baby Girl」を夫妻の手によってリメイク、流行に敏感な現代の女性をモチーフにした軽快なポップ・ミッドに仕上がっています。

60s 70s 80s15. ROCK STEADY
「60s 70s 80s」2曲目は、USの大物ソウルシンガーであるAretha Franklinの同名ヒット曲を、ラッパーMUROがリメイク、サンプリング・スキルが光るバウンシーなアッパーになっています。「駆け落ち」をテーマにしたリリックも緊迫感があってなかなかのもの。でもHook終わりの「これじゃまるで バンジージャンプ」が、「これじゃまるで バージンじゃん」に聞こえたのは、俺だけじゃないはずw




60s 70s 80s(DVD付)16. WHAT A FEELING
「60s 70s 80s」最後の曲目は、80年代を代表する映画「フラッシュダンス」の主題歌である同名曲を、なんとMONDO GROSSOの大沢伸一氏がコテコテのダンス調にリメイク!この安室×大沢の取り合わせには初めビックラこきましたが、出来は文句なしでございます。とにかくエフェクトのかけ方がハンパないのをはじめ、大沢氏の手腕が冴える冴える。機会があればまた組んでほしいなぁ~。ちなみにCMとコラボしたPVですが、3曲の中でこの曲のPVが一番好きです。

BEST FICTION(DVD付)17. Sexy Girl
アルバムラストを飾るのは、①同様このアルバム用の新曲で、力強いメロと今の安室奈美恵を象徴する甲斐性あるリリックが最高にドープな女性賛歌。NHKドラマ「乙女のパンチ」主題歌に起用されていました(ドラマは終了)。プロデュースは、DOUBLEとのコラボ作「BLACK DIAMOND」でも関与していた今井了介と、USK TRAKによるTiny Voice Productionコンビ。

こうして17曲をレビューし終わって思ったことは、ただただ「彼女は本当にスゴいな」。
売り上げが一時的に落ち込み低迷した2002年~2003年、それでもめげずに「自分の音楽」をありのまま提示し続けて再び支持された2004年~2006年、そしてシングル・アルバムのヒットにより彼女の加速度が最高潮に増した2007年~現在と、90年代に一度黄金期を経験した彼女が、再びシーンの頂点を、それも自分の意志と力で極めるまでのプロセスとその結果が鮮やかに記された至高のベスト盤です

当初は両A面楽曲の片一方が収録されてない事に多少ながらの不服はあったんですが、こうしていざCDが発売され聴いてみると、約6年間に及ぶ安室奈美恵の紆余曲折な歴史が、スマートに、でもスタイリッシュに束ねられていて、ひたすら圧巻でした。現在a-nation’08に出演中の彼女、秋からはこのベスト盤を引っさげた全国ツアーが行われます。このベスト盤を経て、さらに進化を遂げるであろう彼女から今後も目が離せません!

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