そもそも「自分たちでも見たことない自分たちを見つけたい」(フジテレビ系『RIDE ON TIME』内での佐藤勝利の発言)と語られているように、Sexy Zoneのメンバーが自発的にこのアプローチを目指したという事実がじつに愉快である。彼らに対してはおそらく、テレビを通して受けるキザで活発なキャラクターや、ファン心理をくすぐる品行方正なアイドルソングを真っ先に想起する人が多いだろう。そしてそういう人であればあるほど、本作の高次元な凄みに意表を突かれ、演劇でいうどんでん返しさながらの爽快感をまんまと味わってしまう。事実、生粋のファンではないリスナーや多くの音楽関係者が本作を絶賛していることから、その思惑は単なる挑戦を超え、あまねく人々を虜にする一級品のエンターテインメントを確立したと言ってもいいだろう。
さて、本作「RIGHT NEXT TO YOU」ですっかり一目置かれる存在になったSexy Zoneだが、これほどに磐石たる布石を打ったからには、まだまだ音楽的な洗練が控えているに違いない。『SZ10TH』と同じ3月にリリースされる次のシングル「LET’S MUSIC」(日本テレビ シンドラ『でっけぇ風呂場で待ってます』主題歌)にしてもホーン大活躍のファンクナンバーに仕上がっている模様なので、カッコイイ音楽に目がないリスナーは注意深く活動をチェックしていく必要がありそうだ。また、これまでのキャリアをあらためて振り返るにつけ、Sexy Zoneというグループがクラブミュージック、あるいはブラックミュージックのテイストに対しなかなかどうして意欲的であることがうかがえたのだが、それはまた、別の機会に掘り下げてみようと思う。
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